夏希 第五話
初恋の相手、洋平との再会
もう夜が明けてきた。
明るくなってきたことが、窓からこぼれる光線で気がつく。
ベッドの上で一人の夏希。一睡もできなかった。
夫の正之とは、すでに別居状態に突入していた。
彼はどこで夜を明かしたのだろうか?
こんな状態であっても、私の性欲は衰えることはなかった。
寂しければ余計に高まるのかもしれない。
夏希は、いつのまにか、両太股の間に枕を挟んで、もじもじと擦り合わせていた。
下半身にはなにも身に着けてはおらず、柔らかな枕が敏感な部分を刺激する。
「ん……んん……」
熱くなってきた股間は、もうトロトロのジュースを溢していることだろう。
あとで枕も洗濯しなきゃ……。
枕を前後に振るように動かすと、クリトリスを刺激して気持ちいい。
しだいに枕を握り締め、強く早く動かし始めた。
擦れる……擦れる……私のクリちゃん……。
刺激を受けるたびに、腰の辺りに電気が走る。
なんだろう? 今日は特に敏感だわ。こんなんじゃ、物足りない……。
夏希は跳ね起きて、ベッドの横の引き出しから、太いバイブを取り出した。
姿見の鏡を移動させ、ベッドの上の自分が映るようにセットする。
股を開いて鏡を見ると、黒々とした陰毛はねっとりと濡れ、その下にはパックリ割れ
た熟したザクロのようなアレがギラギラと光っていた。
夏希は躊躇なく、バイブを突き刺した。
「はぁぁん! あぁぁ、いいわぁ!」
モーター音が微かに耳につくと、バイブは大きくうねり夏希のアレをかき混ぜた。
バイブの動きだけでは物足りず、前後にと激しく動かすと、もう腰が抜けそうになるく
らいの快感が襲ってきた。
鏡に映った淫らな自分……。
そこには自分しか映っていないはずなのに、なぜだか抱かれている錯覚に陥ってい
た。
その人は……洋平……。
大人になった洋平の肉棒が、私の秘部を突き立てる。
ああぁぁ。めちゃくちゃにしてよぉ、洋平!
夏希は意を決して、洋平に会いに行こうと決めた。
会ってどうするかなどわからないけれど、とにかく一目でもいいから会いたいのだ。
夫の経営するレストランのシェフだということは聞いていた。
今から出向けば、仕込み時間に会えるはずだ。
夏希は身支度を始めた。
どの服を着ていこうかしら。
まるでデート前の気分であった。
昼前にレストランに到着すると、離れたところで眺めていた。
どうも中に入る勇気がない。
経営者の妻が訪れるというのは、おかしなことなのだろうか?
夏希は今まで、開店前に来たことなどないのだ。
躊躇していても仕方がない。
夏希は思い切って中に入っていった。
店内では若い店員が清掃している最中だった。
正之の妻だと告げて、シェフを呼んでもらった。
奥からあらわれたのは、まぎれもなく洋平だった。
もう、お互いに大人である。
姿は変わっても、一目でわかった。
それは洋平も同じのようで、夏希の姿に驚いていた。
「奥様、今日はなにか御用でしょうか?」
他人行儀なセリフだった。
「ええ、ちょっと。店と主人のことについてお尋ねしたくてお伺いしました」
私も彼に合わせた。
店内には数人の店員がいるのだから、妙なかんぐりをされたくない。
「では奥に事務室がありますので、そちらでお伺いします」
夏希は洋平の後についていった。
事務室の中に通されると、そこは机とソファとテーブルが置かれた、店内とは別世界
のような味気ない空間であった。
洋平が扉を閉めると同時に、夏希はこらえ切れずに抱きついていった。
「洋平! 会いたかった。ずっと、ずっと……」
知らぬ間に涙が溢れてきた。
洋平と離れたくない思いが、夏希の両腕に表れていた。
か細い腕で、強く抱きしめていたのだ。
けれども、洋平は抱きかえさずにいた。
そのことに気づいた夏希は、ようやく我にかえり、腕から力を抜いた。
「ごめん。取り乱しちゃって……」
「いや、いいんだ。元気にしてたか? 夏希」
夏希は声を出さずにうなづいた。
ようやく落ち着いてソファに腰掛けると、どちらからともなくお互いの近況を語った。
洋平は結婚したが、奥さんは他界しているということは、すでに知っていた。
洋平の話は、亡くなった奥さんのことよりも、今いっしょに生活している娘のことばか
りであった。
血のつながらない、16歳の娘と二人暮らし。
夏希は胸の鼓動が早くなるのを感じた。
それが嫉妬からくるものだということを気づくのに少し時間を要した。
こらえきれない衝動が夏希を揺れ動かした。
夏希は再び、洋平に抱きつくと、強引に唇を奪った。
そして、首筋に舌を這わせ、耳元に吐息を吹きかける。
指先は、彼のシャツのボタンを外し、乳首を探し当て、爪先で突付く。
洋平に感じて欲しい。
お互い、大人になったのだから、それなりの行動で示して欲しいのだ。
「私、夫とは別れるから……」
自然と口に出た。
だから洋平も……それは口に出来なかった。
「夏希……」
洋平が夏希の頭を撫でた。あの頃と同じ優しい手の平だ。
洋平は応えてくれたのだ。
そう思えた。
けれども……。
夏希の手は、洋平の股間へと伸びていた。
ところが、まるで勃起していないのだ。
私なんか、もうぐっしょり濡れているのに……。
「夏希……。僕らはもう、あの頃には戻れないんじゃないかな?」
そっと呟いた言葉はとても冷たく突き刺さった。
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