冬美 第三話
巨乳に興味のない男
満員電車と痴漢にはこりごりということで、冬美は自転車で学校まで通うことにした。
これが案外気持ちいいのだ。
意外と有酸素運動となってダイエット効果もあるかもしれない。
最近、おしりにお肉がつきすぎた感じがする。
もう少し、プリっと引き締めることができればしめたものだ。
けれども、自慢のバストだけは小さくなってほしくない。
これは、いわば冬美の生命線なのだ。
誰もが、自分のバストに注目する。
その視線こそが、生きる源でもあるのだ。
職員室で原田先生と会話する。たわいもない話だ。
仏顔の目じりがさらに下がる。
もちろん私のバストに釘付けで。
身近で一番私に力をくれる人間である。
気分よく一日を終え、自転車で帰宅する。
夕日に混じる心地よい風を感じると、思わず童心に返ってしまった。
長い下り坂を、ブレーキも利かさず降りていったのだ。
周りの景色が、ものすごい勢いで、横から後ろへと飛んでいく。
まるでジェットコースター。
スリル満点である。
ところが……。
前方の交差点から、急に車が出てきて、自転車のブレーキでは止まれなかった。
車の横っ面にぶつかると、冬美の身体は宙に舞い、一回転しておしりから着地した。
「いったぁぁい」
運転手席から慌てて一人の男性が降りてきた。
「大丈夫ですか?」
「はい。なんとか」
痛みはあったが、たいしたことはなさそうだった。
おしりに脂肪が多かったから、軽い打撲ですんだのかしら。
「お怪我はありませんか? 病院へいったほうがいいかもしれない」
「本当に大丈夫ですから」
「いえ、念のために病院へ行ってくれませんか? 私が車でお連れしますので」
私は仕方なく指示に従った。
私からぶつかったようなものなのに、なんだか悪い気がした。
車は左ハンドルだ。よく見れば高級車、メルセデスベンツだと気がついた。
傷つけた車体の弁償代が頭に浮かんでぞっとした。
男は紳士的で、優しく、いつまでも気づかってくれた。
お金持ちだから、あとで慰謝料をふっかけられるのを恐れているのだろうか?
それにしても、この男には、なにか他の男とは違うものを感じていた。
それが何かわからず、少しばかり落ち着かなくなった。
「もうすぐ病院があります。どこか痛むところはありませんか」
「本当に大丈夫なんですよ」
携帯電話が鳴った。
出ると、原田先生からだった。
私が職員室に書類を忘れていったのを知らせてくれたのだった。
私は今の状況を説明すると、驚いて病院に向かうと言い出した。
なんだか、大げさな展開になりつつあった。
男が私を見ていた。
「あ、同僚からです」
その時、この男の違和感に気づいた。
この男は、私のバストにまったく見向きもしないのだ。
じっと私の目を見ている。なんだか緊張してしまう。
幼い頃の対人恐怖症がぶり返しそうだった。
このバストに見向きもしない男がいるわけがない。
きっと事故で混乱していて、余裕がないだけに違いない。
私はブラウスのボタンを一つ外し、バストを強調して見せた。
見えるかしら、この谷間が。
世の男性は、この谷間に顔をうずめることを夢見るのよ。
けれども、男はやっぱり見向きもしない。
やけになってもう一つボタンを外すと、もうブラジャーがしっかりと見えてしまうほどだった。
お願い、見て頂戴。
やっぱり男は見てくれない。
じっと目を見つめるだけだ。
「暑いのですか? それとも胸にお怪我を?」
少しは見てくれたのだが、他の男にみられるスケベ心が表れない。
なんでなの?
がっくりして病院にたどり着いた。
案の定、たいしたことはなかったが、少しばかり足を捻っていたようで、歩くとき少し辛かった。
男は、しばらくの間、通勤の送り迎えをすると申し出た。
断るスキも与えてくれない。
私は名前と住所、学校名を告げた。
私が高校の教師だとわかると、男は目の色が変わった。
男特有のスケベ心だ。
でもバストには注目してくれない。
なにが彼を興奮させたのであろうか?
男の名刺を頂いた。
緑川正之。
飲食店経営という肩書きの持ち主だった。
正之に送ってもらい、自分の部屋にたどり着いても、彼のことが気になって仕方がなかった。
シャワーを浴びながら、自慢のバストを丹念に洗った。
そして揉んでいく……。気持ちいい……。
こんなに大きくて柔らかいのに……。
揉み上げて、乳首を上に向けると、唇に含んだ。
ああぁぁ。
自らの舌先で、葡萄の実を転がす。
すごく気持ちい。
シャワーのお湯は、股間にあてると、より刺激が増す。
ああぁぁ。もう立っていられない。
しゃがみこんでも、バストは揉み続けた。
頭の中で、緑川に犯されている自分を想像する。
この大きく柔らかなメロンにかぶりつく緑川がすごくスケベになっていく様を思い浮かべる。
「ああぁぁ。緑川さん、もっとめちゃめちゃにしてぇ」
シャワー室内で、いつまでも声を挙げる冬美であった。
やっとベッドにつく頃、病院で原田先生をまっているのを忘れていたことに気づくのだった。
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