秋菜 第二話
美人女医の危ない誘惑
夜勤を終えた秋菜は、マンションへ戻ると軽い食事を取った。
弟の真はすでに学校に行ったあとだ。
シャワーを浴びてベッドに入る。
疲れていたので、すぐに眠れそうだけれど、患者の鈴木さんのことがあって、今日は
嫌な夢を見そうな気がする。
この感覚に襲われたときに決まってあらわれる、あの日の忌まわしい出来事の夢だ。
しかし、睡魔をさえぎることはできない。
眠りにつくと、案の定、悪夢を見るはめになった。
看護学生の時、慣れない実習でストレスも溜まっていたから、友人と二人でお酒を飲
んで、うさ晴らしをしていた日だ。
街中で二人の男からナンパされて、カラオケに行ったのだった。
普段なら誘いにOKすることもないのに、その日は酔っていたせいなのか、ストレスを
発散させた開放感からか、まったく警戒することもなくついていってしまったのだ。
調子に乗って歌い、飲んでいると、後から四人の男たちが流れ込んできた。
やばいと思ったときにはもう遅かった。
力ずくに押さえ込まれ、代わる代わる犯された。
恥ずかしいのか悔しいのか、とにかく涙が止まらなかったけれど、男どもはそれを見
てさらに興奮していた。まさにケダモノたちだった。
そのとき、またルーム内に入ってくる人の影が見えた。
その人を、誰かが、「先生」 と呼んでいた。
「先生」が助けてくれるのかと期待したのだけれど、彼もまたズボンを下ろし、肉弾を
膨張させて私に突っ込んできたのだ。
その人の目は絶えず笑っていたけれど、瞳の奥に全てを凍りつかせる吹雪が見えた
ような気がした。眉の間に小さなほくろがあることだけ妙に記憶に残っている。
まるで仏像に犯されているようだ。
ここで、いつも夢は閉じる。
眠りについて四時間。まあ、眠れたほうである。
あの頃は、ほとんど眠れぬ日々を過ごしていたのだ。
いっしょに犯された友人は、ショックに立ち直れず、ナースになることもあきらめ、
故郷に帰っていった。
明るみに出したくないので警察には行かないでと懇願されたので、私はその一件を
ひたすら隠し、忘れようと努めたのだ。
再び夜勤。この日の深夜、一人の患者が急変を起こし、大騒ぎとなった。
宿直担当医は小松麗子だった。
この患者は運がいい。他の医師ならば死んでいたかもしれない。
緊急手術となり、私も手術室に入ることとなった。
麗子の手さばきは、この病院の誰よりも秀でていると思う。女性らしいきめ細かさに、
男性にも負けないタフな一面を持つ。それでいて美人でもあるのだ。
誰もが一目おく、優秀な外科医である。
手術は二時間に及び、無事患者は一命を取りとめた。
「ごくろうさまでした。小松先生」
「ええ。白崎さんもおつかれさまでした」
「患者さんも幸運でしたね。小松先生が宿直のときの急変で」
「あら。白崎さんの処置もすばらしかったわ。あなたが夜勤であったことが幸運でしょう」
お世辞でも、この人に言われると嬉しかった。
「少し、仮眠をとらせてもらいますね。あなたも少し休んだほうがいいわ」
「ええ。でも……私は昼に寝てましたから」
「たとえ30分でも横になると違うものよ。あなた、ちょっと疲れてるみたいだし。手が
空いたら仮眠室に来なさい」
ナースステーションに戻り、同僚に話すと、「一時間くらいならいいですよ」 と言ってく
れたので、私も仮眠を取ることにした。
仮眠室は真っ暗であったが、すでに四つあるベッドの一つに麗子がもう横になっているようであった。
私もベッドに横になり、うつらうつらと意識が遠ざかり始めた。
そのときである。
急に私のベッドに入ってくる人がいた。
「誰?」
「私よ。小松麗子。そんなに驚かないで」
突然そんなことされたら驚くに決まっている。視界は真っ暗であったが、この感触からして、
麗子は下着姿であったのだ。
「突然のオペだったけど、あなたがいてよかったわ」
麗子が私に抱きついてきた。
何度も頬ずりしてきては私の髪を指先でくるくるといじりだす。
そして唇を重ねてきたのである。
暗闇が私の心を解放させているのか、憧れの小松麗子だからなのか、私は何の抵抗も見せずに、
彼女の愛撫を受け続けた。
「あぁぁ…あん」
麗子先生の指先が、私の濡れそぼったワレメをなぞっている。
なんて気持ちいいの。
指先が、私の一番敏感なお肉のお豆を探り当てた。
「はぅぅ……」
お豆が指先で弄ばれると、私はヨガりながら太股を閉じてしまったのだけれど、麗子先生は
責め続けたのだった。
「あ、あ、あぁぁ、だめ、だめぇ、麗子せんせぇ〜え……」
「気持ちいいでしょ? ねえ、私のも触ってよ」
麗子先生の胸に手を導かれる。いつのいまにかブラが外れていた。
小ぶりだけれどすべすべのさわり心地の良いおっぱいだった。
三十過ぎの女性とは思えないスレンダーなスタイルは、街中で見かけたらモデルかと
思う人もいいるかもしれない。
そんな女性に今、私は抱かれているのだ。
人の温もりがこんなに心地よく感じたのは初めての経験だった。
麗子先生が私の上に覆いかぶさってくる。
完全に身を委ねてしまっていた。
もっと気持ちよくして欲しかった。
小さな灯がついた。
「もっとあなたを見せて頂戴」 と麗子先生が言った。
見上げるとそこには、優しく微笑む麗子先生の姿が照らされていた。
それなのに、あろうことか、私はあの日のカラオケボックスの悲劇を思い出してしまったのだ。
仏像のような顔の男のことを……。
「いやぁ!」
私は、麗子先生を跳ね除けて、急いで服装を整えると、仮眠室を駆け出していったのだった。
なんで? どうしてなの?
突然の出来事で涙が止まらなかった。
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